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2017年7月28日 (金)

派生リスクとは?

学校リスクマネジメント推進機構代表・宮下です。

本日は派生リスクのお話をします。
派生リスクとは・・・
  • 間接的に発生する可能性のあるリスク
を指し、分かりやすく言うと、リスク対策を講じた後に生じるリスクのことです。

このリスクは、発生したリスクより、ダメージが大きい場合があります。
この考え方を知らないと、リスク対策を講じたにもかかわらず、別のダメージが拡大してしまうということになってしまいます。


たとえば、いじめで生徒等が自殺してしまい、その責任が学校にもあると疑われ、大騒ぎになってしまったケースで考えてみます。

こうなると、学校側はいじめに対し、適切な指導をしていたことを主張することが多いと思います。
つまり、法的リスクに関する対策です。


弁護士がいる場合は、学校の責任が少なくなる方向で理由を組み立て、
「学校側は安全に十分配慮していた。また、生徒が死亡することは予見できなかった = 責任はない」
との状況を作り上げると思います。


このような中、記者会見や臨時保護者会が開かれた場合、
弁護士は裁判のことを考え、責任がない旨を「しっかり」と話したほうが良い
とアドバイスをするはずです。
そうすると、ほとんどどの学校は弁護士の指示どおり、
学校側に責任があるとは考えていない旨の主張を「しっかり」とする
ことになってしまいます。


しかし、ここで考えて欲しいことがあります。
たとえ生徒の死亡に学校の法的な責任がなかったとしても、これは「法的リスク対策にすぎない」ということなのです。


この学校の記者会見や臨時保護者会が紛糾してしまったことは、想像に難くありません。

関係者は立ち直れない位、疲弊してしまったそうです。


要するに・・・
派生が懸念されるレピュテーションリスク(評判・風評リスク)をコントロールするという視点が全く無かったのです。
このようなことから、学校の発言が責任逃れであるとの批判を招き、評判が悪くなってしまったのです。

そして、報道がヒートアップし、気付いたら多数の入学希望者が他校に流れていたのです。


この学校がその後、どうなったのかというと・・・。
裁判には勝ちましたが、翌年の入学者数が激減してしまったのです。なんと半分以下です。

学校が、派生リスクという考えを持っていれば、法的な説明をした場合に生じる保護者や世間の反発というリスクを事前にコントロールできていたのかもしれません。
反発を招かない言い方や、メッセージを伝えるタイミングなどを工夫できていたのかもしれません。
しかし、残念ながら、既に手遅れでした。
この学校は中高一貫の私立学校でしたので、生徒は6年間在籍しますが、それが半減してしまったのです。


生徒が半減したことによる影響は大きく、生徒数や授業料等から計算すると、トータルの経済損失は、十数億円単位になっているはずです。


十数億円です。
※仮に公立学校だった場合でも、苦情の嵐だったはずです。

「意思決定は一瞬です。」

弁護士と校長が裁判で有利になるように、会見や臨時保護者会では「明確にしっかりと責任を否定しておこう」という会話を事前にしていたのかも<しれませんが、それが全ての損失に繋がってしまったのです。


リスクマネジメントの知識が少ないことは、本当に怖い事なのです。


裁判が終わり、しばらくしてから、この弁護士は校長にこう言ったそうです。


弁護士:「校長先生、やはり裁判で勝てましたね。良かったですね」


校長:「・・・・・。」

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