2017年8月21日 (月)

見えないリスクは管理できない

本日は「残存(留)リスク」について説明したいと思います。

残留リスクとは、文字どおり「残っているリスク」のことを言います。
残っているリスクとは・・・
  • 認知されていないリスク
  • 認知はしているものの対策を講じていないリスク(保有リスク)
  • リスク対応後に残るリスク
という言い方もされています。

※国際標準規格に合わせるため、以下、残存リスクではなく「残留リスク」と明記します。

実務上、特に注意が必要なことは、ある問題を解決するために、学校として手段を講じたものの、この問題に含まれる他のリスクを認知して対策を講じることができなかったことから、このリスクが大問題になってしまうようなことです。

たとえば、いじめ問題があり臨時保護者会を開催する学校では「保護者会が紛糾する」というリスクを避けたいはずです。
その対策として、想定問答集を作ったりするわけです。

そして、この想定問答集が機能すれば、保護者会の紛糾リスクが低減するため、特に問題なく保護者会が終わることもあると思います。

しかし、このような学校でも保護者会後に大問題に遭遇する場合があります。
臨時保護者会の2日後、あるマスコミから学校に連絡があり、保護者会で学校が配布した書類を入手したので、その書類が本物かどうか確認してほしい、との依頼があったのです。

配布した資料には想定問答で回答した内容が一部に明記されています。

この学校は配布した資料が「マスコミに漏れた場合に問題になる」という残されたリスクを認知できなかったのです。

これが残留リスクです。
学校がこのリスクを認知できなかったことから、学校が配布した資料の内容がマスコミに漏れて、結果的に・・・、

  「やはり責任逃れの保護者会。配布資料入手」

という内容が週刊誌に掲載され、再び焦点があたってしまったのです。


繰り返しますが、保護者会は紛糾しなかったにもかかわらず、です。


もし、事前にこのリスクを学校が捉えていれば、資料を配るか否かの判断や、配る場合でも、その内容について、批判を避けるための内容に調整できたはずです。

臨時保護者会には把握しにくいリスクが他にもたくさんあります。

経験上、一番多いことが、本題に関係のない学校への不満です。

たとえば教員の不祥事が問題となり、臨時保護者会が開催された場合でも、うちの子は2カ月前に友人から怪我をさせられた、1週間前に担任に厳しく注意されて子どもが落ち込んでいる・・・等。

こういった保護者会の本題に関係のない事も残留リスクとして認識しておくと、臨時保護者会の想定問答集に事前に盛り込むことができるのです。

学校には様々なリスクがありますが、対策を講じるときには、「残留リスクはないか?」ということを、是非考えてみてください。


2017年7月28日 (金)

派生リスクとは?

学校リスクマネジメント推進機構代表・宮下です。

本日は派生リスクのお話をします。
派生リスクとは・・・
  • 間接的に発生する可能性のあるリスク
を指し、分かりやすく言うと、リスク対策を講じた後に生じるリスクのことです。

このリスクは、発生したリスクより、ダメージが大きい場合があります。
この考え方を知らないと、リスク対策を講じたにもかかわらず、別のダメージが拡大してしまうということになってしまいます。


たとえば、いじめで生徒等が自殺してしまい、その責任が学校にもあると疑われ、大騒ぎになってしまったケースで考えてみます。

こうなると、学校側はいじめに対し、適切な指導をしていたことを主張することが多いと思います。
つまり、法的リスクに関する対策です。


弁護士がいる場合は、学校の責任が少なくなる方向で理由を組み立て、
「学校側は安全に十分配慮していた。また、生徒が死亡することは予見できなかった = 責任はない」
との状況を作り上げると思います。


このような中、記者会見や臨時保護者会が開かれた場合、
弁護士は裁判のことを考え、責任がない旨を「しっかり」と話したほうが良い
とアドバイスをするはずです。
そうすると、ほとんどどの学校は弁護士の指示どおり、
学校側に責任があるとは考えていない旨の主張を「しっかり」とする
ことになってしまいます。


しかし、ここで考えて欲しいことがあります。
たとえ生徒の死亡に学校の法的な責任がなかったとしても、これは「法的リスク対策にすぎない」ということなのです。


この学校の記者会見や臨時保護者会が紛糾してしまったことは、想像に難くありません。

関係者は立ち直れない位、疲弊してしまったそうです。


要するに・・・
派生が懸念されるレピュテーションリスク(評判・風評リスク)をコントロールするという視点が全く無かったのです。
このようなことから、学校の発言が責任逃れであるとの批判を招き、評判が悪くなってしまったのです。

そして、報道がヒートアップし、気付いたら多数の入学希望者が他校に流れていたのです。


この学校がその後、どうなったのかというと・・・。
裁判には勝ちましたが、翌年の入学者数が激減してしまったのです。なんと半分以下です。

学校が、派生リスクという考えを持っていれば、法的な説明をした場合に生じる保護者や世間の反発というリスクを事前にコントロールできていたのかもしれません。
反発を招かない言い方や、メッセージを伝えるタイミングなどを工夫できていたのかもしれません。
しかし、残念ながら、既に手遅れでした。
この学校は中高一貫の私立学校でしたので、生徒は6年間在籍しますが、それが半減してしまったのです。


生徒が半減したことによる影響は大きく、生徒数や授業料等から計算すると、トータルの経済損失は、十数億円単位になっているはずです。


十数億円です。
※仮に公立学校だった場合でも、苦情の嵐だったはずです。

「意思決定は一瞬です。」

弁護士と校長が裁判で有利になるように、会見や臨時保護者会では「明確にしっかりと責任を否定しておこう」という会話を事前にしていたのかも<しれませんが、それが全ての損失に繋がってしまったのです。


リスクマネジメントの知識が少ないことは、本当に怖い事なのです。


裁判が終わり、しばらくしてから、この弁護士は校長にこう言ったそうです。


弁護士:「校長先生、やはり裁判で勝てましたね。良かったですね」


校長:「・・・・・。」

2017年7月21日 (金)

危機管理と危機対応?

学校リスクマネジメント推進機構代表・宮下です。

私は主に緊急時のマスコミ対応、保護者対応、そして、学校がこれから何をどのような優先順位で対応していけばよいのか?という判断を学校危機管理の観点からサポートとする仕事をしています。

分かりやすく言うと、トラブル発生時に支援をして損失を最小限におさえること、ということです。

今日はその辺の話をしていこうと思います。

上記のとおり、トラブル発生時に考えなけらばいけない危機管理の目的とは、

  • 生じる「損失」の影響度を最小限に抑えること

つまり、危機が発生したら、これからどのような損失が「想定」されるのか?ということを先に考えてから、効果的な対策を講じる、ということが前提になります。


「想定」できれば管理可能ですが、想定できなければ「対応」になってしまうため、損失をコントロールすることが難しくなってしまうのです。

「危機管理」が大切で「危機対応」は避けるべきということです。

そして「想定」しなければいけない損失は沢山あります。

たとえば、大きく分類すると、生命・身体、時間、財産、感情、評判などがありますが、国公立学校もそうなのですが、私立学校の大きな損失は、

「入学者数の減少」です。

どんなに進学実績がある学校でも、一気に足元をすくわれてしまいます。
このような中で、学校がやるべきことは、発生したトラブルの損失を想定し、その損失を抑えるために一番効果的な手段を選択して、対策を講じるということです。

対策には、法的な対策、警察的な対策、組織リスクマネジメント的な対策、心理学的な対策などがあり、さらにこれらの対策を事案に応じて組み合わせ、オンライン(WEB)、オフライン(アナログ)でその実行を図っていくのです。

・・・・と、ここまで、いろいろお話してきましたが、特に覚えて頂きたいことをまとめました。

それは、トラブルが発生したら、
  • ここから生じる様々な損失を先に想定する。
  • その損失を抑えるために効果的な対策をオンラインと、オフラインの両面から組合せて講じていく
ということ。

危機対応ではなく、危機管理をするということです。

このことを意識するだけで対策が効率化するはずです。

2017年4月21日 (金)

いじめの認知件数が増加しています

■ 補導・事件数といじめ認知件数の増減割合の乖離■

昨年(平成28年)のいじめに関する警視庁の統計が発表され、逮捕や書類送検・補導人数と件数が発表されています。
まず、下記の内訳をご覧ください。

 〇 事件の摘発・補導人数 : 267件/前年比:マイナス19%
 〇     事件数    : 149件/前年比:マイナス26%

この数値は、3年連続で減少傾向となっています。
しかし。
3月初めに公表されました、文科省の学校を対象とした「いじめの認知件数」の調査はどうなっているのでしょうか。

 〇 いじめの認知件数 : 22万5132件(過去最多)

さらに、潜在的な件数はもっと多いと考えられています。

■数値の乖離の理由はどこに?■

この乖離は、いったいどういうことなのでしょう?
まず一つめの理由は、学校側が早期発見を心掛けているので、その結果として件数が増えているというものです。
いままで表出なかったいじめも認知し表に出し、対策を講じるよう学校側が心掛けるようになったことが挙げられます。

二つめの理由は、SNSを通じた無視や誹謗中傷など、メンタルを圧迫していくいじめが深刻化している、というもの。

一つめの理由に対し、こちらは深刻です。
暴力など目に見える形ではないため、事件化しにくく表出しにくいので、事件としては数えられません。
また、このようなメンタルを圧迫するいじめは、学校から離れていても、いっときも精神的な圧迫から逃れられません。
このようないじめが長期化した場合、最悪の事態が発生してしまうこともあり、その時の学校が受けるダメージは計り知れません。

■いじめが発生しやすい月はいつ?■

ある統計では、いじめが発生しやすい月下記のように挙げています。

 〇 最多発生月は5~6月、次に多い月が10~11月

5~6月と言えば、もうすぐそこ。
初期段階を過ぎると、事態はより深刻になってしまいます。
深刻化する前に、早期に発見し対策を打つことが重要となってきます。

■いじめを止めてほしい人は誰か?■

上記と同じ統計の中で、「いじめを止めてほしい人は誰か?」という質問に対し、

 ・1位:友人
 ・2位:学級担任

という結果が出ています。
生徒等が学級担任にどれだけ助けを求めているのかを表す結果ではないでしょうか。
しかし、その期待が裏切られたら?

子どもの訴えや様子に真摯に耳を傾け、陰湿化する前に止められなければ、教員や学校のダメージも大きなものになってしまいます。
早急に、いじめを見逃さない、発生したらどのように対応するかといった対策を、今から策定しておくことが重要となるでしょう。

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学校リスクマネジメント推進機構のブログがはじまりました

本日より、学校リスクマネジメント推進機構のブログ、「学校リスクマネジメント通信 WEB版」が始まりました。
初回のご挨拶に変えて、私・津倉の自己紹介をしたいと思います。


■ 自転車を愛するウェブ人間 ■

私は今年1月より、弊社のウェブ担当としてお世話になることになりました。
これまで、10年ほどウェブ業界(途中人生を脱線、自転車店勤務なども経験しましたが)に身を置き、主にECに関わってまいりました。
このたびはちょっとしたご縁から、まったく世界の違う弊社に入り、毎日が発見の連続。とてもエキサイティングな日々を過ごしています。

趣味は、自転車に乗ること。そしてカスタマイズやメンテナンス、修理も趣味の一つです。
旅好きな妻との新婚旅行は、3か月間の「日本縦断自転車旅」。
ちょっとだけサバイバルな新婚旅行でしたが、大事なことも学べたひとときでした。


■ 自転車乗車時は、リスクマネジメントの連続 ■

日本縦断自転車旅といった長期間の旅は、しみじみとした「旅情」や、人との出会いがクローズアップされます。
それはそれで確かに魅力ですが、道中の9割は「少しハードな日常」が続きます。
なぜなら3か月の間、常に初めての土地を移動し続けます。常に新しい状況が発生しますし、リスクマネジメントの連続でもあるのです。

たとえば・・・、

・ 危険の少ない道は?

・ 自転車を屋内に止められる宿は?

・ 雨は降るのか、何日後にどれくらい降るのか?

・ それまでに安く雨を凌げるビジネスホテルがある都市に到着するには、 どの行程がよいだろうか・・・。

これらのことはほとんど毎日、場合によっては1時間に1回は考えています。
そんな中でも、自転車旅で最も大事なリスクマネジメントは、

「旅の終わり、自宅まであと50km圏内のマネジメント」

と言われます。

勝手の分かる土地に戻った時、安心しそれまでの緊張が緩み、また気持ちもはやるため、大きな事故になるケースが非常に多いのです。

私の場合、1泊はさむことで気持ちを落ち着かせ、体力を取り戻し、

翌日ゆっくりと帰途につく、という選択で切り抜けました。


■ 自転車のリスクマネジメントは一人でできる。でも、学校は? ■

上記のとおり自転車旅の場合、ほとんどのリスクは自分でマネジメントが可能です。
しかし、学校で起こるトラブルは、保護者クレームやいじめなど、一人だけでマネジメントできることは少ないと思います。
そんな性質を持つ、学校リスクマネジメント。
実際の現場では、どのように管理していくものなのでしょうか?

私自身も学びながら、代表・宮下の様子や思などを織り交ぜ、様々な情報をみなさまにお届けしていきたいと思います。